プラウ ザ ネクスト

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山形県

若者の発想 地域変える
山形新聞社など新潟を含む東北七県の八新聞社はこのほど、活力と魅力ある地域社会の創造を目指す「プラウ・ザ・ネクストー21世紀のきらめきコミュニティづくり」を各県で開催した。本県では、「若者たちの連携による地域づくり」をテーマに、山形市と西川町大井沢の二会場で開かれ、約五十人が参加した。山形市内の蔵再生プロジェクトと大井沢の地域イベントにかかわる東北芸術工科大の学生・教員、村づくりのリーダーらが活動事例を報告し、新たな地域づくりの可能性を探った。各県の成果を持ち寄り、今月三十日に東北芸術工科大で総括フォーラムを開催し、東北全体の活性化策について議論を深める。
【山形会場】
蔵生かし街を活性化交流の場から観光へ
サポートの輪 広げる
東北芸術工科大の学生らが中心になって再生された山形県十日町の蔵「オビハチ」でのプレゼンテーションでは、同大の三田育雄教授がコーディネーターを務め、最初にヤマガタ蔵プロジェクトを推進してきた同大の山畑信博助教授が「なぜ蔵なのか」のテーマで話した。「山形の蔵はベニバナや北前船につながる最上川舟運とかかわりが深く、市内には約四百棟の蔵が残っており、これだけ集まっている街は珍しい」と山形の蔵の特徴を紹介。都市開発が進み年々姿を消しており、いまこそ蔵を再利用し、街の活性化に結び付けようと、「蔵プロジェクト」の意義を強調した。
プロジェクトの中心となって活動してきた同大大学院の井手理恵さんは、「蔵の可能性を探ることや住民のニーズを知ること、蔵を維持するサポートの輪を広げることの三つのコンセプトを軸に、蔵主をはじめ芸工大生、教職員、市民グループなどが力を合わせ事業を進めてきた」と経過を語った。蔵「オビハチ」は、一階をカフェ、二階をギャラリーに改装、作品展示会やワークショップ、ライブなどのほか、蔵のシンポジウムも開かれ、今年五月十日から三週間の運営期間中に若者を中心に約千人の来客があった。蔵の老朽化が進み持ち主個人で維持していくのは厳しい状況で、人のネットワークなどサポート体制づくりが課題だと提言した。
蔵主の小嶋正八郎さんは、都市開発に伴い駐車場にしようと考えていたところ、井手さんから再利用の話を聞き、プロジェクトに参加することにしたと蔵保存のいきさつを紹介。「六月に事業が終了した後も、学生たちの運営母体をグレードアップして経営しているが、山形国際ドキュメンタリー映画祭の上映会場になるなど面白い空間になりそうだ。後に続く蔵が増え観光資源に結び付けば」と期待感を話した。
同大学院の押野友美さんも、今後の展開の課題として、さまざまな団体と連携したネットワーク化を挙げ、NPO方式といった形も選択肢の一つになると呼び掛けた。
プラウ・フェローの志賀秀一東北地域環境研究室代表は「山形ならではの貴重な財産があることをしっかり認識し、光を当て再生に取り組むことだ。人が集い交流する場を提供することから始め、特に学生たちの視点で計画を進めた例はあまりないだろう」と評価。ほかから人を呼び込むより、参加する人がいい所だと情報を共有することが大事で、そうした思いが外に伝わり観光にも結び付く。最終的には、かかわる人の問題になるとコメントした。

【西川会場】
雪まつりに学生“助っ人隊”元気づく大井沢
続いて、大井沢の民家ギャラリー「麦藁(わら)」に移動し、農林水産祭(農水省など主催)の「むらづくり部門」で去年、天皇杯を受賞した大井沢の地域づくりの成果や課題などについて意見を交わした。
東京からIターンし、ギャラリーを運営している田作政司さんが、地域を訪れる人たちの励ましに支えられながら、大井沢の活性化に取り組んでいる現状を紹介した後、「大井沢の元気を創(つく)る会」の志田龍太郎さんと志田浩一さんが大井沢独自の活動やマンパワーについて報告。「大井沢を訪れたり、移り住んでくる人が徐々に増え心強い。将来ともここで暮らせるような環境づくりに努めたい」と意気込みを語った。
一九九〇年に始まった地域のメーンイベント・大井沢雪まつりは、少子高齢化で実行委員会のメンバーが少なくなり、継続が危ぶまれていたが、外部から若い力を呼び込む学生助っ人隊を発足させ、いまでは延べ二百人に達している。「雪まつりだけでなく、地域のさまざまな行事に参加してもらい、若いパワーに刺激され村が元気づき、学生たちも住民との交流により、新たな生きる糧を吸収しているようだ」と互いの利点を強調した。
助っ人隊に参加した同大の OB阿部恵さんは、「大井沢の魅力は人間で熱血と感動がある。学校では勉強できない達成感を味わうことができ、助っ人隊の体験が宝物になっている」と振り返った。
三田教授は、大井沢の村づくりの特徴として、自立的な取り組みがあり、助っ人隊をはじめ、県外の中学生の体験学習やIターン者が目立つなど地域の良さを外部の目を通して再認識している。さらに、地元に根差した多彩な試みも有効だと大井沢方式を考察した。
参加者からは、「助っ人隊に参加したが、外部の人が来ることで地域が元気になることは嬉しい」「少子高齢化への対応としてIターンへの期待が大きいようだが、ほかにも対策が必要ではないか」といった意見が出された。

[2氏が総括]
新しいアプローチ動かすエネルギー、学生実感
東北芸術工科大教授 三田育雄氏
今回の蔵プロジェクトと大井沢の村おこしの事例は小さく、まだ発展途上だが、従来の手法とは違う地域づくりのアプローチではないか。これまでだったら、議論の中で消えていくようなことや普通だったら通らない話が実際に動いたのは、若いエネルギーと感性が大きく働いたからだろう。若さをぶっつけ、試行錯誤しながら目標に立ち向かうなど計算ずくではない行動の意味は大きい。また、学生にとっても、地域を動かすことができるエネルギーがあることを実感できたのではないか。

人の魅力が磁力に楽しく明るく活動、共感呼ぶ
東北地域環境研究室代表 志賀秀一氏
地域づくりで必要なのはそこにいる人たち自らが将来の設計図を描くことで、他人まかせでは成果は生まれない。大小の基準で見たり、昔の成功事例を持ち出すのではなく、今回の二つの事例のように学生たちの新しい目など非常識というぐらいのものをもってこないと生き残るのは大変だ。人の魅力の数と集積が人をひきつける磁力を発するわけで、若い力を結集させ、地域の個性をさらに磨いてほしい。いまあるものに自信を持ち、楽しく明るく活動することで共感を呼び、自然と外に広がり大きな力になっていく。
(2003年11月20日山形新聞朝刊より)

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