プラウ ザ ネクスト

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岩手県

「山・森と流域を見つめなおす−人々が出会い連携する場に」
岩手日報社など東北八新聞社協議会が主催し、地域のさまざまな課題を探りながら活性化の方策を考える「プラウ・ザ・ネクスト〜21世紀のきらめきコミュニティづくり〜」はこのほど、滝沢村の県立大で開かれた。テーマは「山・森と流域を見つめなおす−人々が出会い連携する場に−」。ヒストリア総合研究所代表の薦田宏俊氏をコーディネーターに、豊島正幸県立大総合政策学部教授が基調講演、平塚明同助教授が課題提起プレゼンテーション。約六十人の参加者が二つのグループに分かれてワークショップを行い、活発な議論を展開した。
【プラウ・ザ・ネクスト】主催は7県8新聞社で構成する東北八新聞社協議会(岩手日報社、東奥日報社、秋田魁新報社、山形 新聞社、河北新報社、福島民報社、福島民友新聞社、新潟日報社)。後援は岩手県、東北経済連合会ほか。岩手県立大が協力。アサヒビール、JR東日本、三菱自動車工業ほかの協賛。「プラウ」は北斗七星を意味し、新潟を加えた東北7県が一体となった地域創造の願いを込めた。さらに、鋤(すき)の意味もあることから、地域活性化のための掘り起こしの期待が加わる。各地域がそれぞれテーマを設定して議論し、30日に山形県で開催する総括フォーラムで報告し合い、今後の指針を論議する。

地域課題探り活性化考える

ワークショップAグループ
森林保全へ「組織化」 ボランティアの拡充も
PHOTO Aグループは「今、なぜ流域内連携が求められるのか」をテーマに、林業従事者が減少している中で、産業としての林業について将来の方向性から討論が始まった。
林業の従事者難によって、森林が荒れていることを指摘。特に、人工林の杉林が手入れされず、林全体がどんよりとした暗さを呈しており、木材として利用できるものが少ないのが現状。
このためには行政面、制度面から森林経営を見直し、産業としての基盤を確保するために総合的な取り組みの必要性を訴えた。森林が抱える課題は多く、その解決に当たっては一地域だけにとどまらず、流域全体で考え、行動する必要があることを強調した。
また、ボランティア集団が森林保全に活動しても「年間10ヘクタールが限度」という報告を踏まえ、ボランティア集団の拡充を呼び掛けた。
森林の持つ機能は治山治水のほかに多岐に及んでいる。その一方で、「人と森」との共存意識を再認識し、新たな森林の生かし方を見いだしていくことを探った。
豊かな水環境と良質な森林との相互関係を理解し、守り育てていくために継続的な取り組み方法が提案された。現地に足を運び「今、ここで何が起きているのか」の状況を知ることから始め、そのための「組織化」を図ることを確認した。

ワークショップBグループ
上・下流が情報共有 双方で維持コスト負担
PHOTO 平塚助教授を中心としたBグループは「里山の景観をどのようにデザインするのか」をテーマに話し合った。最初に、参加者それぞれが抱く里山のイメージを、絵や言葉に表現して一人ひとりが発表した。
発表では各メンバーが自分の持つ里山のイメージを解説した。▽植物、動物、昆虫などの生物多様性▽山、森、集落、田畑、川が一体となって存在する▽自然が持つ機能と役割を理解する人たちが暮らす空間▽山や森の恵みを人間が利用しながら共生する場▽自然が体験できる▽人間が住みたいと思う場所−などがキーワードとして挙がった。一方で、「私たちは里山に多くのことを要求し過ぎているのではないか」との指摘もあった。
また、現在の里山が抱える問題として▽森林の管理を含めて後継者がいない▽山に手をかけるほど赤字になる▽下流域の人たちが森の維持コストを負担する仕組みも必要−などの声があった。
「これから里山の景観をどのようにつくっていくか」という課題については、「現状維持と復元の両方を考えるべき」「さまざまな情報を上流から下流の人まで共有することで自然に対する理解と謙虚さが生まれる」「除間伐などの林業ボランティアの受け入れ態勢整備が必要」との意見が出された。

意見を述べ合う場が必要
基調講演
豊島正幸・県立大総合政策学部教授
PHOTO  山、海、流域に人びとが出会い、連携の場となることに私は非常に強い思い入れを抱いている。本日をスタート地点として今後三年間、行動を起こしながら流域内の連関・連携を考えていきたい。
岩手県が食糧供給基地であり続けるためには、農業、漁業、林業の第一次産業を維持できる状態でなければならない。そのために森、川、海の流域内の連携が新たに求められている。
平成十四年に設立した「閉伊川森と海をつなぐ環境保全推進委員会」の取材を通して、私は人との出会いの中でいろいろな問題を聞くことができた。その一つとして印象的だったのは「最近宮古の下流部で浸水しやすくなった」という話だった。この事実を重く受け止め、初めて下流部から山へ思いをはせることができた。
閉伊川は宮古市、新里村、川井村の一市二村を流れる約75キロの長い河川だ。この閉伊川の河床が土砂のたい積によって上昇し、平水位が高くなった。近年、降水量が増えて平水位もレベルアップした。さらに河川に対し人間が手を加え続けたことによって、河川の空間を狭くしてきた。こうした大きな要因の一つとして、上流域の山の状態があるのではないか。
流域の人たちが一堂に集い、それぞれの立場から意見を述べ合う場が必要。そこから新たな連携を築くことがますます重要になっている。

木質バイオマスが大切に
課題提起
平塚明・県立大総合政策学部助教授
PHOTO  岩手は県土の77%が森林。伐採もあるが、同時に植林も進められ、森林面積は増えている。しかし、外国の安い木材に押されて県内の林業は苦境に立たされており、結果として森林の荒廃が目立ってきた。間伐をしなければ健全な木は育たない。下草を刈らなければ地表に日光が届かず、カタクリやオキナグサなどの花が育たない。また、森に人間の手が入らないと、人と森の心理的な距離は遠くなってしまう。
岩手の山の特徴として、頂上付近に草地が広がる景観がある。種山ヶ原に代表されるように、特に北上高地でこの風景が多く見られる。ここでは中世から馬の遊牧が、近年は牛の遊牧が行われた。また、山地では焼き畑農業も営まれた。このような土地も、人間がかかわらなければ荒れるだけとなる。
里山という言葉は最近のキーワードだ。そこは田畑、集落、山林がセットになったイメージがある。つまり、山や森に人間が手を入れ、その資源を利用しながら共生する場所として描かれる。
山や森を荒廃させないためにも、森林の管理は大切だ。その一環として最近注目されているのが木質バイオマス。間伐などで得た木をエネルギー源として利用しようとする発想だ。コストなどの問題があるが、森の活性化には考えていく必要がある。また、流域やその先の海のことまで見つめた新たな森の在り方を考えなければならない。
(2003年11月27日岩手日報朝刊より)

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