プラウ ザ ネクスト

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秋田県

プラウ・ザ・ネクスト秋田
東北七県(新潟を含む)が連携し、二十一世紀日本の指針となるような地域づくりの在り方を探る広域事業「プラウ・ザ・ネクスト」がスタートした。キーワードは「創新」。各県が独自の切り口から、地域の潜在力を引き出して魅力・活力に高める方策を論じ合った。本県は「産業創新」をテーマに掲げ、秋田公立美術工芸短大の卒業生が起業したアートデザイン会社「ARTE(アルテ)」をモデルケースに、アカデミーベンチャー企業の可能性や課題を検証した。各県の成果を持ち寄って取りまとめる総括プラウは三十日、山形市の東北芸術工科大で開かれる。

人材、自然、文化、歴史・・・
東北が日本を先導
バブル崩壊は、戦後日本の成長を支えた価値観の崩壊でもあった。諸外国からエコノミック・アニマルと揶揄(やゆ)されながらも世界有数の経済大国にのし上がった日本は、実態のないマネーゲームに踊らされ、多くを失う結末を迎えた。浮かれ気分が吹き飛んで気付いたのは、極めて基本的だが足元を見つめ直すことの大切さだった。
資源の宝庫・東北。人材、自然、文化、歴史−目を向けると埋もれたままの存在が山のようにあった。
平成七年、二十一世紀を目前にして、東北八新聞社協議会は七県が進むベき道を模索し、議論する場として東北ラウンドテーブルをスタートさせた。各県持ち回りで計七回開催、東北が秘めた可能性を探求した。最後は東北が日本の創造的主役を目指すという「東北宣言」を採択、新たなネットワークづくりに乗り出す決意を固めた。
そして昨年は観光に主軸を据えたまちづくりを検討した「プロジェクト・ザ・プラウ」を実施、今回の「プラウ・ザ・ネクスト」に至った。
ちなみに「プラウ」は北斗七星を意味する。古来から羅針盤的な役割を果たしてきたプラウをタイトルに掲げたのは、東北が日本を先導するとの意気込みからだ。

始まりは「やりたい」
大学発の利点生かす アルテ
PHOTO 昨年春、秋田公立美術工芸短大を卒業したばかりの男女四人が設立したアートデザイン会社が「ARTE(アルテ)」。石川好・同短大学長の発案に賛同した企業などが出資し、全国でも珍しい公立短大による起業支援が実現した。
それから一年半余、アルテは地道に業務拡大に取り組み、話題性先行からの脱却を図ってきた。秋田発のアカデミーベンチャーとしてのメリットや今後の方向性などを、ことし四月に二代目社長に就任した時田和幸さんが語った。
自分たちの作品を発表し、販売する場がほしいという思いを現実にしたのがアルテだ。スローガンは「三つのC」。その土地の大学(カレッジ)を出た人間が、その土地を支える人々(キャピタリスト)と一緒に、その土地とともに発展する会社(カンパニー)をつくろう、というものだ。
大学発の企業であることのメリットは多い。ノウハウがなければ教員に相談できるし、学校を拠点にした人的ネットワークが広がっていく。商品開発も学校と共同で進められる。半面、卒業と同時の起業だったため仕事に対する意識の低さは否めなかったし、経験不足を痛感させられもした。
会社の業務は物販、商品開発、デザインワークが柱。在校生・卒業生のみならず県内作家の作品を販売し、川連漆器など本県独自の工芸技術や素材を生かした商品づくりに尽力している。
PHOTO デザインはグラフィックの仕事が中心。結果的には名刺やチラシの制作だけにとどまるにしても、相手先の企業ブランドを構築する意気込みで臨んでいるし、いつかは包括的なプランニングを任せてもらえるよう幅を広げたい。
アルテは、やりたいことをやるんだいう気持ちで立ち上げた。「やる気」の次には「考える」が必要になる。例えば物販。商品企画から開発、市場調査、製造、流通、販売まですべてを自社で賄おうとしても無理だろう。だとしたら、自分たちが直接手掛けるところと外部へ委託する部分を見極めた上で、一連の流れをシステム化しなければならない。このほか、人・モノ・金・道具・時間・情報の活用、市場に打って出るためのマーケティング戦略も固めなければならない。
いまはまだ走り出したばかり。「夢が膨らんでできた会社。でも夢だけでは終わらせない」をモットーに頑張ろうと思っている。

意欲ある起業者 COAが手助け
出席者
▼パネリスト
石山昌孝・秋田公立美術工芸短大元教授
時田和幸・アルテ代表取締役社長
福森普子・アルテデザイナー
中野鋼一・秋田市工業労政課長
大野政人・チャレンジオフィスあきたインキュベーションマネジャー
長尾秀樹・日本政策投資銀行新規事業部次長
▼コーディネーター
薦田宏俊・ヒストリア総合研究所代表
PHOTO  「産業創新−地域文化産業の可能性」がテーマのパネルディスカッションでは、アルテ関係者と秋田市の創業支援担当者らがベンチャー企業への期待や展望を論議した。
秋田市は二月、遊休施設を「チャレンジオフィスあきた」(COA)として整備。低家賃でオフィスを提供し、経営面の指導・助言を担う専門家を配置するなど、起業者のステップアップを手助けする拠点とした。
入居しているのはアルテを含めて十三社。目指すところは「早く稼げるようになって、COAから巣立ってほしい」(中野課長)。ベンチャーの成功事例として自立するスター起業に育てば、続こうとする気運が高まるからだ。
COAへの入居は最長で五年。「その間に年商五千万−一億円の起業に成長する手助けをしていきたい」(大野マネジャー)。もっともいくら支援体制が整っていても、最終責任を負うのは各企業。見通しに甘さがあれば、事業内容の見直しや再スタートを迫られるケースもある。
アルテの初年度年商は約千四百万円にとどまった。創業以来、がむしゃらに走ってきた分、手を広げ過ぎとの指摘もあるが、福森さんは「仕事を絞り込むと、創業コンセプトから離れていく気がする」と話し、生産性アップで対応する構え。時田社長は「そろそろ利幅の大きい仕事や、デザインをはじめとする得意分野への誘導を考えたい」との意向を示す。
初代社長を務めた石山元教授は「創業には綿密な計算があったわけではなく、何かをするためのアクションという雰囲気だった。若いパワーと感性に大学のユニークさをうまくミックスし、秋田の若者を刺激する会社に成長してほしい」と期待を寄せる。
最後に長尾次長が「ソニーも京セラもスタートはベンチャー。地域全体で起業者を支援する体制確立が急がれる。そうした取り組みは都市圏よりも地方の方が進めやすいはずだ」と結んだ。

地域挙げベンチャー支援を
基調講演
日本政策投資銀行新規事業部 長尾秀樹次長
PHOTO  ベンチャー企業という言葉は定着しているが、その在り方についての明確な定義はない。技術力を売り物に世界市場の最先端分野で競争できる企業から、既存技術に独自のアレンジを施した小回りの利く企業、消費者ニーズを見据えた経営ノウハウで勝負する企業、そして町の発明家レベルまで、さまざまなタイプが現存する。
大規模ベンチャー企業への出資は株式公開(IPO)や企業売却(M&A)で収益を追求するキャピタルゲイン型が一般的。これに対して地域ベンチャーは、配当や株主優待などの還元を受けるインカムゲイン型を志向した方がいい。

資金調達に多様な手法
ベンチャー企業にとっての最大の問題は土地や建物などを保有していないため、資金集めが難しいことだ。そこで、ノウハウや技術といった知的財産権にも担保価値を認めるようにした。例えばインターネットのポータルサイトなら、商標権、著作権、ドメイン名などが対象になる。また、一定の成果を得た事業の知的財産権を担保に新規事業資金の融資を受け、成功すればその事業の知的財産権に新たな担保設定をするという連鎖的な事業展開も望める。
現実として、ベンチャー企業は五年後には1−2割しか残らない。アイデアを商品化しても量産する手段がなかったり、利益を生む前の段階で資金が続かずに頓挫(とんざ)するケースが多いからだ。
そこで浮上したのが地域プラットホームという概念。これまでは個々に企業とかかわりをもっていた地域の行政機関、大学、銀行など、行動原理が異なる組織をネットワーク化し、産・学・官・金(金融)が協調して有望な企業の成長をサポートする仕組みだ。
合わせて、信頼関係で結ばれた企業集団が資金と情報を拠出し合って一段と高い対外的信用を構築し、資金調達を円滑化するコミュニティー・クレジットという手法もある。これも頭に入れておいてほしい。
(2003年11月21日秋田魁新報朝刊より)

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